・Review
1940年生まれニュージランド出身のピアニスト、Mike Nockの作品。耽美的であると同時にどこか乾いた世界観がこの音源全体を覆っている。変わったピアニストである。確かにジャズなのだけど、ジャズではとさまらない、というよりもはみ出たもっと広がりのあるプレイ。
しかしそこにやり過ぎ感やいやらしさ、押し付けがましさがなく、サラリとやっており、非常に好感がもてる知的なプレイ。ベースはBIll Evansを支えたEddie Gómez、ドラムはBobo StensonやKeith Jarrettとのプレイが忘れられないJon Christensenという布陣。そしてベースとドラムの一歩引くスタンス。目立たないけれど、決定的な仕事を各所でしている。あくまでピアノが主役な音であると理解し、各々の華やかさを上手に抑制しまとまったトリオとなっている。それは必要最小限の音で表現する枯山水のようなプレイとも言え、美しい。一歩引くという意思表示によってもたらされる美。
では、主役のピアノはどうだろうか。これだけ抒情的で、耽美的でありながらエモーションに溺れず堅実に、むしろ反対のドライさら若干醸し出すミニマルなプレイ。なんだこのバランスは。
物憂い気だるさが通底するForgotten Love
Ondasの瑞々しく美しいトリオ
Visionaryの洒落た崩し方
Land of The Long White Cloudはまるで映画のサウンドトラックかのような泣きのメロディとスケール感
トリオの表現が存分に発揮されたDoors
一曲一曲が長く計5曲収録。一曲が短い小作品をたくさん聴いてみたいと思わせるピアニスト。イメージがしやすい音なので映画向きか、とすら思う。
あまり知られていないが、傑作だと思う。
・Catalogue
ECM 1220 Mike Nock ’Ondas’ (1982)
・Track list
1 FORGOTTEN LOVE (Mike Nock)
2 ONDAS (Mike Nock)
3 VISIONARY (Mike Nock)
4 LAND OF THE LONG WHITE CLOUD (Mike Nock)
5 DOORS (Mike Nock)
・Personnel
Mike Nock piano, percussion
Eddie Gómez bass
Jon Christensen drums
・Website
Mike Nock http://www.mikenock.com
コメントを投稿するにはログインしてください。