私は365日1日1枚ECM Records (ECM レコード)の音源を聴き、レビューするというプロジェクトを実行し完了した。(とても長い旅のようであり、あっという間であった。)なお、音源全ては全て身銭を切った。それがECM Recordsの音源にコミットする資格と勝手に位置づけていたからだ。(経済的にはそれが苦難の始まりであったが…)これは良きアーティストに対して、良きリスナーでいたいという矜持でもある。
私の自己紹介を改めてすると30代中盤に差し掛かろうとしており、同い年の妻と共働きの3人家族である。(このプロジェクトの途中に子供が生まれ妻は育休中となった。)当然稼ぎは多くはないし、このプロジェクトの継続には原資捻出のための様々な工夫が必要だった。そんな私がECM Recordsの音源をどのように調達し本プロジェクトを継続したかをシェアしたいと思う。ECM Recordsに限らず私と似た「重度な音楽好き」な方々の為にこの記事を書きたい。
どのようにしてECM Records の音源を調達したかを調達コストの順に記載したい。なお音源の形式はCDでありレコードではない。また元々持っていた音源を除き、最もローコストで、入手できるものから手をつけ、トータルコストの低減を図るというのが私の戦略であった。ローコストで入手できるものこそ、わかりやすい歴史的名盤であるという経済学的論理に大いに助けられた。(予断だが、名盤にもわかりやすい名盤と、ミュージシャンズミュージシャンという名盤の2つがあると考えている。)では調達先を列記して行く。
1.TSUTAYAでレンタル。
大御所あるいかつジャズの名作に分類されるものであれば、最も安くECM Records の音源を調達できるのがTSUTAYAだと思う。しかも当然だが名盤揃いである。旧作CD5枚レンタルで1,000円だから1枚あたり250円と新品で買うよりもおよそ10分の1だ。ECM Recordsに限らず、ジャズやクラシックにおける歴史的な名盤をこのコストで調達できるTSUTAYAには感謝の念しかないし、こういう会社がインフラ化している日本は「素晴らしい国だなぁ」としみじみ思える瞬間である。なおここで入手できる音源で言えば、Keith Jarrett などがその筆頭だ。
2.JANIS(ジャニス)でレンタル。
「音楽の図書館」を標榜する御茶ノ水にあるレンタルCD屋さん。(中古販売もあり。)TSUTAYAと異なり、かなりマニアックな音源を取り揃えている。10代の頃、友人に教えてもらってから、もう10年以上通っていて、長い間お世話になっている。
オフィシャルサイトはこちら。http://www.janis-cd.com
心強いのがECM Records の専用コーナーもあること。そしてNew Seriesを豊富に取り揃えている点だ。コスト面では非常に有難いお店だ。10分の1に近い金額でマニアックなECM Records の音源を調達することが出来るのだから。
このお店の嬉しい特徴を、少し深掘りすると次の3点である。
a.全ての音源が視聴できる
b.5のつく日は金券半額バック。例えば該当日に5,000円分レンタルすると、次回使える2,500円分の金券がもらえる、といった具合である。
c.マニアックな音源多数
例えばKeith Jarrett のBlue Noteのライブ音源や映画sound and silence等はここで借りることが出来たし、Nee Series の音源はここで随分お世話になった。
3.Amazon経由で直輸入。
上記2店舗で拡充できないものについては、新品との価格差が大きいもの限ってAmazonで購入した。入手までのリードタイムはあるが、国内盤より明らかに安価なものが多数ある。指名買いで非常に有効だ。
4.Amazonです 中古を探す。
1円で販売されているものも少なくない。が、そうしたものは安価に流通しているものだったりする。それでも新品より安価である。指名買いであれば嬉しい購入方法。
5.ユニオンの中古コーナー
特に御茶ノ水店、新宿店にはよく掘りに行った。ともあれ平均単価は1,500円ほどか。価格競争力はAmazonの中古と比べてないのが実態だ。ここの魅力は、思ってもなかったものと遭遇することが最大の魅力である。いわばジャケ買いをはじめとするまったく知り得ない音源との出会いが期待できる。顕著な例でいうとECM SELECTED SIGN 等はここで出会った。
6.タワレコで、新品購入。
最新の作品が主な対象である。こればかりは仕方ない。例えばCraig Tabornの新譜など。その他として私はまだ試していないのだが、Spotifyをはじめとする定額のストリーミングが選択肢に入る方もいるだろうが、音質の観点で私は使用していない。個人的にはMP3の音質の悪さが耳についてしまい、耐えられないのだ。ECM Recordsは録音芸術でもある。再生環境にもよるが、CDで楽しんだ方がいい。
まとめ
こんな形で、コストの最小化を計り、時に狙い撃ち、時に制約下での出会いあり、時に博打?を打つような形で音源を聴いてきた。以上が私のブログのレビューがアトランダムになった理由であり、アーティストのリリース時系列が崩れている理由でもある。すなわち一期一会であった。そしてこれはあくまで入手の仕方であり、原資となる予算については、他人からすれば涙ぐましい諸々の施策を、複数講じてなんとか捻出したのが現実である。
例えば、次の節約方法で月額約30,000円を浮かすことができ、結果、音源の調達に大いに役立った。まさに「災い?転じて福となる」である。(一年間に換算すると約36万円であり、365枚の音源を調達する金額に辻褄が合う。つまりプライベートな生活にまったくダメージを与えずに済んだ。予算オーバーの可能性がある月は、後述する究極の方法で乗り切った。)節約したことは以下である。
1.会社へ水を持参し、自販機で飲み物を買わないようにした。
→月額 約3,000円のインパクト
2.出勤方法を電車から自転車にし、交通費を節約する方法
→月額約10,000円のインパクト
3.外食を徹底的に控える方法
→月額約3,000円のインパクト
4.購読冊子の2紙の解約
→月額約1,500円のインパクト
5.格安スマホへの切り替え
→月額約5,000円のインパクト
6.タバコを1日10本制限
→月額約4,600円のインパクト
7.新聞を1紙解約
→月額約2,000円のインパクト
加えて、究極の原資調達方法は次である。
「購入したECM RecordsのCDを売却する」
これによって得られた金額を新しい音源を購入する原資あるいは想定以上の支出の補填とした。しかしコレクション前提の人は難しいかもしれない。私はあくまで「視聴体験」に重きを置いていたので所有欲はない。なのでこれは人によってはお薦めな方法論だ。
こうした性格に加え、私の経済力と家のスペースでは厳しいと言わざるを得ないのが現実である。(無論、お気に入りは数枚残している。Arvo Part等)こうした地道な積み重ねにより、できる限り家族に迷惑をかけないようにした次第である。おかげでこのプロジェクトが終えた今、家計がかなりスリムになったくらいである。(おかげでプロジェクト中にECM Records のアーティストでもあるSteve Reichのライブに行くこともできた。)
本編とは関係ないが、家計の参考になれば嬉しいし、ECM Records を聴き込みたい、という人の参考になればなお嬉しい。