ECM Recordsの特集が組んであった。
マンフレート・アイヒャーのインタビューが興味深い。
以下、数点引用させていただく。ただこれはほんの抜粋にしかすぎない。
本当の魅力は本紙の中にある。
・ECMとECM Seriesの違いについて。
「それをなんと呼ぶのかは自由だが、おおむね即興的につくられた音楽ということができるだろう。もっとも、そこにはミニマル音楽やトランスカルチャー音楽も含まれてはくるが。NewSeries は逆に作曲された作品だ」
・ふだん、仕事以外でも音楽はよく聴くんですか?
「音楽がわたしの中心だ。音楽がわたしを生かしている。音楽のなかに暮らしているといってもいい。音楽こそが、わたしのパンと水だ」
・ヨーロッパ以外の音楽について
「(中略)結局のところ、ヨーロッパ人だろうがアメリカ人だろうが、そのことはたいして重要ではない。重要なのは、その人の音楽言語だ。影響はいたるところからやってくるわけで、それをどう自分のなかに取り込むか。そこが重要だ」
・音楽の好き嫌いについて
「強いて、音楽でキライなものがあるとすれば不誠実なアプローチをするもの、上っ面だけのものだが、キライなものについての話はこれ以上はやめよう。わたしが何が好きか、と聞かれるなら、それはECMのなかにあると答えておこう」
・一緒に働くアーティストを選ぶ際の基準のようなものってありますか?
「基準はクオリティだ。加えて、私自身が好きになって共感できなくてはいけない。つまり、そのアーティストが、私にどんなインプットをもたらしてくれるかということだ。(中略)彼らが音楽に対して新しい音楽をやっていて音楽に新しい味覚(Flavor)をもたらしてくれるかどうかだ。もし彼らがそういうものをもっているならレコーディングをすることになる。」
・ジャズの進化について
クオリティという点でいえば、その時代その時代の新しい音楽家と、過去からずっとやってきた音楽家とをつねに探すようにしている。つまり今日起きていることと、過去に起こったことのバランスというものをみつけて、それを融合させたいと思っている。そこでの基準というのがあるとすれば、音楽が自分に働きかけてくれてストーリーを語ってくれるかどうかにあって、それがトレンドやファッションに従っているかどうかは重要ではない。ファッションやトレンドが語るのは、命の短いストーリーだ。わたしには長生きするストーリーのほうが価値がある。であるからして、ひとりのアーティストと仕事する際にも、長い時間をかけてともに作品をつくりだしていきたいと思っている。これはとても重要なことだ
ヨーロッパ以外の音楽について
「ヨーロッパの中心から外れた場所で生み出されている音楽を紹介したいと思っている。アルバニア、アルメニア、グルジア、ウクライナ、こうした場所には素晴らしい発見がまだまだある。アルヴォ・ベルトのエストニアもそうだ。逆の言い方をするなら、いい音楽は、どこの地域の誰がつくったものであってもいいということでもある。大事なのはそれが何を語りかけてくるかということだ。
辺境の地の魅力について
’’神秘’’を聴き取れるかどうかが重要だ。単なる「音」ではない。それとメッセージ。そのメッセージを聴き取り、それを世間の耳目に触れてもらうのがわたしの仕事だと思っている。メッセンジャーでありたいんだ。それを聴衆とシェアして、みながよりよい聴き手となってくれることを願っている。それがわたしの目的だ。いい音楽を発見して、それを可能な限りいいサウンドでみなさんに届けるということだ」
レコーディング前のイメージについて
「イメージはない。自分が録りたいと思った音楽を、それがもっている音楽言語や楽器編成にしたがって、最も忠実に録音されることを心がけるのみだ。」作品作りのプロセスについて「(中略)スタジオに入って、ラインを探していくんだ。ラインというのは、どうやったらふわさしいかたちになるか、その道筋をみつけるということだ。かたち(ShapeOfThing)がもっと重要だ」
プロデューサーになるために必要なことについて
聴くということ、それが何よりも大事なことだ。それも謙虚さをもって聴くことだ。人が何を語ろうとしているのかを理解するためには、謙虚さが必要だ。そうして人の語ることが理解できるようになったら、そこからアイディアを組み上げていくことができるだろう。わたし自身、常にもっといい聴き手になりたいと願っている。聴いて聴いて聴く。ただそれだけだ。フランスのある修道僧がこういう言葉を残している。If you wish t osee, Listen. Hearing is a step towards Vision’(見たいと願うなら:聴け。聴くことでヴィジョンへと到る)」